いわゆる用途発明とは、物の特定の性質(属性)を発見し、この性質を専ら利用する物の発明と解釈されています。(審査基準で,「用途発明とは,(i)ある物の未知の属性を発見し,(ii)この属性により,その物が 新たな用途への使用に適することを見いだしたことに基づく発明をいう」と説明(特許・実用新案審査基準第III部第 2 章第 4 節 3.1.2))
特許法では29条1項各号に定める新規性の無い発明については特許を受けることができない旨、規定しています。
すなわち、従来から存在した化合物の新規な用途を見いだしたことを持って、用途発明として特許権が認められるかが論点となります。
用途の他については、新規な構成を有さない用途発明については、性質の発見に過ぎず、特許性を認めるべきでは無いという意見もあります。
しかし、特許法2条に定める自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものという発明の定義にも明らかな通り、特許法の保護対象は具体的な化合物等では無く抽象的な概念となります。
従って、従来から存在した化合物の新規な用途を見いだした場合には、当該用途の点で新規性を有し、当該用途が従来知られている範囲とは異なる新たなものであるときは当該用材料等として特許を受け得ると言えます。
この論点がと問われたときは、29条1項各号に定める新規性を有さない発明の「発明」とは技術的思想の創作に係る抽象的な概念であることを明確にし、用途発明が保護されるべきかを論述していくことで論文の厚みを持たせることができます。
なお、論文試験とは話がずれますが、審査基準で挙げられた公知の「成分 A を有効成分とする肌の保湿用化粧料」に対する「成分 A を有効成分とする肌のシワ防止用化粧料」の様に効果を達成するに至るメカニズムが異なっていたとしても、両者はともに皮膚 に外用するスキンケア化粧料であるため、公知の「成分 A を有効成分とする肌の保湿用化粧料」を皮膚の外用薬として使用した場合には当然に肌のシワ防止の効果が得られます。従って、「シワ防止用」という用途限定は従来から存在していた効果の発見に過ぎず、特許性は認められません。
また、用途発明の保護については国によっては物の発明では無く、方法の発明としてのみ保護を認める等、各国毎に保護の考え方が異なりますので、ご注意下さい。
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