考案と意匠との違い(一致点、相違点問題)

 意匠法と実用新案法はどちらも物品に係るアイデアを保護する権利!

 平成24年の本試験での出題された論点になります。

 この様な論点では、なぜ発明と意匠との比較では無く、敢えて考案と意匠との比較かを考えることが重要となります。

 比較問題の解法では定石となる考案と意匠の一致点、相違点を整理してみます。話は脇道に逸れますが、出願の審査における新規性の判断も請求項に係る発明と先願発明との一致点、相違点の整理から始めますので、特許庁への手続きを代理する弁理士の試験における比較問題で一致点、相違点の記述を飛ばしてしまうと大きな失点になると思います。

 実用新案法1条では「この法律は、物品の形状、構造又は組合せに係る考案の保護及び利用を図ることにより、その考案を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。」とあり、保護対象は「自然法則を利用した技術的思想の創作」である考案の中でも、物品に係るものに限定されています。

 意匠法1条で保護対象として規程された「意匠」は、2条で物品(物品の部分を含む。以下同じ。)形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)等と定義されています。

 両者の保護対象は物品に関するアイデアという事で一致しています。ここで考案と意匠との比較という点を踏まえると、一致点として「物品」への言及できたかは心象点を大きく左右すると思います。

 一方で相違点としては保護の方法が異なるということになります。即ち、上記物品に関するアイデアを技術的思想の創作という側面から捉えた場合には実用新案法による保護を受ける事となり、美観の創作という側面から捉えた場合には意匠法による保護を受ける事となります。この点については青本の意匠法1条の箇所に記載されています。

 実用新案法で保護を受けるか、意匠法で保護を受けるかは創作されたアイデアの捉え方の違いによるものですので、実用新案法、意匠法間では出願の変更の制度が規程されています。この様な問題が出題された場合における出題者の意図は、意匠の保護対象も特許法、実用新案法の保護対象と同様にアイデアであるという事を理解できているかの確認にありますので、いずれの法も保護対象がアイデアである事を一致点としてしっかりと言及しましょう。

なお、実務上は変更が適法に認められれるのは、あくまで出願に記載の範囲内に限られます。このため、特許出願を意匠登録出願に変更する例はあり得ますが、意匠登録出願の願書と図面の記載内容から技術的思想の創作が実質的に把握できる場合はあまり無い為、意匠登録出願を特許出願等に変更した例は現実的ではないと思います。

 ちなみに、商標法の場合、例えば立体商標の様に、標章自体に創作性があったとしても、保護対象は標章自体では無く、標章を商標としての使用することによって商標に化体した商標使用者の信用となり、保護対象が異なります。保護対象が異なる為、当然に商標登録出願から意匠登録出願等への変更も出来ません。4法の中で商標法のみが保護対象がアイデアでは無く信用ですので、今後も商標法と他法との違いを確認する問題は出題される可能性があると思います。4法の違いの理解を問うために、例えば、特徴的な形状を有する立体商標に絡めた問題が今後も出題され得ると思います。

 弁理士試験

 弁理士試験論点

 弁理士論文試験 論点と書き方

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