「弁理士試験一次試験を何とかして突破したい。」
「過去問を繰り返しても弁理士試験の一次試験を突破できない。」
この記事はそんな方に向けて書いています。
はじめまして。
2005年からの知財業界在住、サラリーマン弁理士ブロガーのパテろうです。
私は企業での知財部門勤務の中でより専門性を磨き、自分に付加価値をつけるため、弁理士資格に挑戦しました。
私自身は、弁理士試験の受験にはコストを抑えるため、論文試験の本質を掴めなかったことと、受験に対するモチベーションを維持し続けることができなかったため合格までに平均よりも多くの年数が掛かってしまいました。
ただ、自身の受験の反省や合格後の私ゼミでの講師経験を通じて、受験機関を活用しなくても早く受かる受験生の特徴から、弁理士試験の目的を理解し正しい勉強をすれば独学でも効率的に受かることに気づきました。
はじめから正しい勉強ができた方の情報はたくさん溢れていますが、苦労しながら正しい勉強にたどり着いたという視点からの意見も同様に参考になると考えました。
受験に苦労し、受験後は私ゼミの講師として受験生に接した経験をもとに、これから弁理士試験に挑戦される方に効率的に弁理士試験を突破するノウハウをブログを通じてお伝えしたいと思います。
弁理士試験一次試験の独学勉強法
弁理士試験一次試験は主に弁理士が備えるべき知識の有無の確認と二次の論文試験受験者の足切りを目的に行われます。
論文試験の採点には時間が掛かるため、一次試験合格者の絞り込みはかなり厳しく行われます。
(一時試験の合格率は二次試験よりも低く、10%未満となる年もあります。)
出題は5択形式のマークシート形式で、満点60点に対し合格点は39点ですが、正解の枝がいくつあるかを問う問題等がふんだんに出題され、条文の細かい内容を把握していないと34~35点程度で点数の伸びが止まり合格点を取れない様になっています。
この記事ではこの弁理士試験一次試験の35点の壁を独学で突破し合格点に到達するために必要な書籍とその活用方法を解説します。
◆一次試験突破に必要な書籍と活用方法
・産業財産権 四法対照 (PATECH企画)
一次試験の効率的な勉強に必須の条文集です。
一次試験では四法間の条文の文言の違いや条文の引用状況、規定されていない条文等が細かく狙われます。
この条文集は四法対照となっているため、特許法、実用新案法、意匠法、商標法の四法の条文を比較しながら読む読むことが可能ですので、狙われそうな箇所を見つけ易いです。
また、この条文集は余白部分が多く設けられています。
四法間の条文の規定や文言の違い、条文の引用関係、過去問での出題状況、関連する条約等の情報を余白部分に記載していき、この条文集をノート代わりとして知識の集積を図りましょう。
四法対照を比較しながら条文を初めから最後まで読むこと試験までに最低3回以上行って下さい。
条文を読み込む度に何らかの発見があるはずです。
一次試験は条文の知識で全て解答可能ですので、この四法対照の条文集を用いた読み込みが一次試験対策の基本となります。
なお、この四法対照の条文集は意匠法や商標法の条文は番号順に並んでいないため、二次の論文試験対応には使用できません。
あくまで四法対照は一次試験突破に向けて条文知識を整理して集約するためのツールと割り切って下さい。
また、産業財産権法は時代の流れに合わせて改正が頻繁に行われます。
問題文作成スケジュールの関係から改正は改正の次年度以降の試験で出題されることが多いのですが、条文集は法改正毎に買い換え、その度に復習を兼ねてメモの再作成をしていくことがお勧めです。
・弁理士試験 体系別短答過去問(東京リーガルマインド)
四法対照の条文集を用いた読み込みが対策の基本ですが、それのみに絞ると退屈で却って効率が悪くなるため、過去問の力を借ります。
毎年、新作問題が出題されることと法改正が頻繁に行われることから、過去問の繰り返し学習のみでは34~35点程度までしか達せず合格点には到達できないですが、この試験の出題箇所の癖を効率的に把握するために10年程度の過去問を解いてみるのが効果的です。
過去問の解き方としては、過去問10年分で①~④を繰り返し、条文中の重要なキーワードや出題箇所の四法間の規定の相違点を確認していくと過去問で出題されていない箇所が少しづつ見えてきます。
この気付きを四法対照の条文集にメモとして記載していきます。
前述の四法対照の条文集の読み込みと過去問を用いた①~④の作業の繰り返しで35点の壁を突破し合格点に到達できます。
①過去問を解く
②問題の解説を読み、条文の重要な文言や問題点を確認する。
③関連条文と四法間の規定に違いが無いかを確認する。
④関連条文の確認時に条文集に出題箇所を記載
過去問学習は知識のインプットが主目的ではなく、出願傾向を知ることが目的のため、受験機関の予想問題集や模試を入手して勉強する必要はありません。
受験機関の予想問題集や模試はマニアック過ぎたり、問題文としてのチェックが過去問と比べ不十分となっている場合もあるため、あまり重視しなくて大丈夫です。
過去問集は東京リーガルマインド以外にも出版されており、どれを選んでも問題はありません。
ただ、10年分の過去問を揃える場合、東京リーガルマインドのものが最も安価であったため、筆者はこれを用いていました。
なお、毎年、新作の問題が出題されることと法改正が頻繁に行われることから、過去問集は毎年の最新版を入手することをお勧めします。
2021年版 弁理士試験 体系別短答過去問 特許法・実用新案法・意匠法・商標法 (弁理士試験シリーズ) [ 東京リーガルマインドLEC総合研究所 弁理士試験部 ] 価格:4950円(税込、送料無料) (2021/9/20時点)楽天で購入 |
2021年版 弁理士試験 体系別短答過去問 条約・著作権法・不正競争防止法 (弁理士試験シリーズ) [ 東京リーガルマインドLEC総合研究所 弁理士試験部 ] 価格:3080円(税込、送料無料) (2021/9/20時点)楽天で購入 |
・逐条解説 不正競争防止法(経済産業省知的財産政策室)
不正競争防止法と著作権法とは合計10点分が出題されます。ここから4点を取らなければ足切りとなります。
不正競争防止法と著作権法も条文の読み込みが基本ですが、著作権法に比べ条文の短い不正競争防止法はぜひ得点源にしたい法域です。
この書籍を用いた勉強は一次試験突破に必須ではありませんが、記載量も多くは無く、読み易い参考書のため、お勧めします。
逐条解説 不正競争防止法〔第2版〕 [ 経済産業省知的財産政策室 ] 価格:4840円(税込、送料無料) (2021/9/20時点)楽天で購入 |
・図解シリーズ
パリ条約
特許協力条約
TRIPS協定
マドリッドプロトコル
条約についても基本のインプットは条文の読み込みです。
ただ、条約は日本の法律と規定の流れが異なっているため、条文全体の流れを把握には当初、戸惑うと思います。そこで、条文の全体感を把握するのには図解シリーズがお勧めです。
図解シリーズは条約毎に発刊されています。
図解シリーズの説明内容が一次試験でそのまま出題されることは無いため、図解シリーズ全て必要とは思いませんが、配点割合と条文量を踏まえると、特許協力条約は買いで良いと思います。
図解特許協力条約第5版 堤卓補訂 [ 荒木好文 ] 価格:2200円(税込、送料無料) (2021/9/20時点)楽天で購入 |
図解TRIPS協定 [ 荒木好文 ] 価格:1760円(税込、送料無料) (2021/9/20時点)楽天で購入 |
図解マドリッドプロトコル改訂版 堤卓補訂 [ 荒木好文 ] 価格:1760円(税込、送料無料) (2021/9/20時点)楽天で購入 |
・工業所有権法逐条解説(発明推進協会)
通称、青本と呼ばれる参考書です。二次試験、三次試験に必要な知識が記載されています。
一次試験は条文の知識を備えているかの確認のため、一次試験突破の勉強と割り切る場合には前に挙げた書籍と活用方法のみで対応可能で、青本の知識までは不要です。
ただ、条文の読み込みと合わせて各条文の趣旨を確認しておくとその後の二次試験の勉強がスムーズですのでここに紹介します。
一次試験までに時間的な余裕がない場合は省略して問題無いです。
以上が弁理士試験一次試験突破に必要な書籍とその活用方法です。
一次試験の準備開始時期ですが、一次試験は5月下旬ですので少なくとも年明け早々には準備を開始するのが良いです。
一次試験は適切な勉強法ができれば、独学でも勉強時間に比例して点数が伸びていきます。
四法対照の条文集をしっかりと読み込み、合格点まで着実に点数を伸ばしましょう。