弁理士試験論文試験の書き方、独学勉強法

「弁理士試験に挑戦したいが、お金はかけたくない。」

「独学で弁理士資格を取得するためのノウハウが知りたい。」

この記事はそんな方に向けて書いています。

はじめまして。

2005年からの知財業界在住、サラリーマン弁理士ブロガーのパテろうです。

私は企業での知財部門勤務の中でより専門性を磨き、自分に付加価値をつけるため、弁理士資格に挑戦しました。

私自身は、弁理士試験の受験にはコストを抑えるため、論文試験の本質を掴めなかったことと、受験に対するモチベーションを維持し続けることができなかったため合格までに平均よりも多くの年数が掛かってしまいました。

ただ、自身の受験の反省や合格後の私ゼミでの講師経験を通じて、受験機関を活用しなくても早く受かる受験生の特徴から、弁理士試験の目的を理解し正しい勉強をすれば独学でも効率的に受かることに気づきました。

これから弁理士試験に挑戦される方に短期で弁理士試験を突破するノウハウをブログを通じてお伝えしたいと思います。

弁理士として特許庁に提出する書類を作成できる素養があるかをチェックする弁理士試験ニ次の論文試験、まさに弁理士試験の山場です。万年筆又はボールペン等、消しゴムが使用できない筆記具で論文を書く独特のスタイルに慣れるための訓練も必要です。

マークシートと違い、記述内容のどの部分が評価され、どの部分で減点されたかも分かりにくいので、勉強の方向性に戸惑う独学組の方も多いと思います。

この記事では筆者の私ゼミでのゼミ生の答案の採点へゼミでの議論の経験を踏まえ、論文試験の解答の書き方の留意点と、必要な書籍、それを活用した勉強方法を解説します。

[解答作成時の留意点]

◆解答の結論が設問と合致しているか?

 答案構成で先ず解答の結論と設問との整合性をチェック

私ゼミで講師として受講者の答案を確認していると例えば、特許要件として進歩性が要求される理由を聞かれているのに、進歩性とは何かを厚く解答している答案が散見されます。

これは、解答を記述していく中で知識をアピールしたいという思いが勝ってしまい、設問に対する解答からズレていったものです。

二次試験は特許庁に提出する書類を作成能力を確認することが目的で知識の有無の確認の優先度は低いです。(知識の有無は一次試験で確認済み)

特許庁に提出する書類の要点は問題点の明確化と、それに対する的確な解答です。

例えば、特許要件として進歩性が要求される理由を聞かれた場合には、青本の記載を参照し、「新規な発明の公開の代償としての特許権付与という制度趣旨を踏まえ、新規な発明には一律に特許権を付与するという考えは妥当とも考えられる。

しかし、通常の人が容易に思いつくような発明に対して排他的権利を与えることは社会の技術の進歩に役立たないばかりでなく却ってさまたげとなるので、そのような発明を特許付与の対象から排除するため、法は特許要件として進歩性を規定した」と論じる一方で、進歩性とは何かは記載しなくても問題ありません。

この設問では解答の中に進歩性とは何かの説明があっても減点にはなりませんが、設問の趣旨と合致していないため、加点されず記述時間が無駄になります。

これを避けるため、記述開始前に答案構成で先ず解答の結論を記載し設問と解答との整合性を確認しましょう。

論理構成が妥当か?

 論述問題は答案構成で論理の事前確認!

論文試験では結論を導くための論理が重要です。特許法の1枚目で出題されることの多い当てはめ問題では、条文の要件が根拠となり、条文への当てはめによる論理構成がされます。

また、特許法の2枚目や意匠法、商標法で出題されることが多い論述問題では、結論の妥当性を示すため、問題点や結論の内容とすべき必要性、得点アップを狙う場合には結論の内容としても法の想定される範囲に影響が限定されることを示す許容性を記述します。

当てはめ問題の場合には条文を見ながら、条文に記載の順序で当てはめていけば良いので答案構成は重要ではありませんが、論述問題は答案構成で結論、問題点、必要性、許容性を整理し説得性のある論理構成となっっていることが確認できた段階で記述に移りましょう。

論述問題についての参考記事です。

 弁理士試験論点

◆文言が正確に用いられているか?

 不正確な文言の減点はボディーブロー、食らいすぎると命取り

私ゼミの講師としてゼミ生の答案を採点していて多く目についたのが文言を正確に用いないで記載された答案です。

弁理士試験は文言の正確性に非常にシビアです。

例えば、「特許発明に基づいて製品Xの製造。販売を差し止める」というような答案が散見されます。弁理士の作成する書面は法律文書となっているかがチェックされるため、特許発明に基づく権利行使ではなく、特許権に基づく差し止め等、文言を正確に使用する必要があります。

文言の使用が正確でないとの心証を持たれると、答案の粗探しに繋がり、思わぬ失点を招く可能性もありますので、自信があっても条文集で条文を確認しながら記載するくせをつけましょう。

◆修正の多さ

 微修正は問題無いが、大幅な修正は採点者の採点意欲が確実に減退

修正が軽微なものであれば全く問題無しです。

しかし、時には段落の追加や段落の並びを変えるような大幅な修正が行われている答案にであることもあります。

このような答案は読みにくくなるので採点者の心証に確実に悪影響を与えます。受験機関の模試での優秀答案に大幅な修正がされたものはまずなく、読みやすい答案が多いはずです。

修正が多くなってしまう方は答案構成が十分で無い段階で記述を開始していることが多いと思いますので、答案構成と答案構成からの書き起こしの練習をして修正を減らすようにしましょう。

◆文字の綺麗さ

 綺麗よりも丁寧が重要!

文字が綺麗である方が答案の見た目が良くなるので間違いなくプラスです。

しかし、文字が下手ても大きな字で丁寧に書いてあれば全く問題はありません。

答案は採点者に読んでもらいたいという気持ちが大事です。

筆者の受験時には答案を手書きのラブレターに例えて教わりました。

初めて送る手書きのラブレターを殴り書きにはしないと思います。

 

◆心証点の重要性

 採点者も人間、心証は重要!

論文試験は論文中にキーワードが記載されているかの確認のみで合否が決まる訳ではありません。

結論を導く論理が妥当な答案は読みやすいので採点者の心証が良くなります。

心証の良い答案は論理や文言の使用法の粗探しがされにくいので、結果として減点されずに高得点になりやすいです。

一方でキーワードの羅列で内容の薄い答案は、採点者は物足りなさの原因を探し始めるので、結果として減点箇所が増えて点数が伸びません。

二次試験必須科目は4つの論文を提出しますが、4つの論文について安定して合格点を獲得するためには心証を上げるのが近道です。

心証点は概ね、使用する文言の正確さと論理展開の妥当性によって決まります。

これを磨くには答案を合格者に読んで貰って助言を得るのが近道です。合格者が身近にいないときは受験生同士で読み合わせて助言し合うことや、優秀答案を入手して自分の答案との違いを検討してみるのも効果的です。

 

[必要な書籍とその活用方法]

◆条文集

一次試験では四法対照(PATECH企画)の条文集が必要でしたが、四法対照は条文が番号順に並んでいないので論文試験には不向きです。

法律が順番に記載された最新の法文集を入手しましょう。

なお、本番で使用されるものと同じ法律の順序に編集され、本番と同じサイズを使用したいのであれば、LEC等の受験機関が発行する条文集を使用すれば良いです。

ただ、これには規則等も記載されており、サイズも大きく重いため、筆者は普段使いにPATECH企画が発行するコンパクトな法文集を使用していました。

条文集によって内容が変わるわけでは無いので、四法対照とは別に自分に合った条文集を購入しましょう。

◆工業所有権法逐条解説(発明推進協会)

通称、青本と呼ばれる参考書です。青本は一次試験突破には不要でしたが、論文試験以降は必須です。

青本は知的財産権に関する国からの受託事業を実施する発明推進協会が発行する書籍ですので、青本の記載が特許庁の考え方となります。

弁理士は特許庁へ提出する書面の作成を代理する資格ですので、基本的にはこの青本の趣旨を理解して論述できれば論文試験に合格できます。

ただ、青本は条文を番号順に解説する逐条解説となっているのと、論文試験では単独の条文について問われることは原則無いので、同じ法域、場合によっては四法間で共通する条文の解説同士を横断的に読み込み、対象の制度を理解することが必要です。

また、青本は同じ趣旨の内容でも、条文の解説毎に異なる表現で説明しています。

この表現が違いを整理すると制度趣旨を多面的に理解できます。

論文試験では、青本の文言を正確に再現できればキーワードに付与された点数を取れるため、合格点には到達するのですが、趣旨を逸脱する範囲で文言を間違えると致命傷になります。

また、青本の暗記は実務ではあまり役立ちません。

資格取得をゴールとするといった特殊な事情がなければ青本の暗記よりも、条文の解説毎の表現の違いに着目して趣旨の理解を重視し、調子の波が起きにくい状態を目指すのが良いと思います。

青本の読み込みは成果が形として見えにくいですが、結果として最も効率的な論文対策になるはずです。

なお、青本は受験生向けでは無く、解説が淡々と述べられているので独学で重要な部分を見つけるのは大変です。

身近に合格者が居れば、助言を得たり、受験仲間が居れば、青本の表現で気になる部分を協議したりすることがお勧めです。

近くにそのような知り合いがいない場合には、そのような知り合いを確保するために受験機関を活用するのも一つの選択肢です。

なお、この場合も受験機関の活用理由は知識を得るよりも青本の理解促進の場を得るのが目的と割り切ると通信講座は選択肢から外れます。

◆審査基準

特に意匠法や商標法では保護対象が何かを視点を変えて問われていることが多いのですが、青本の記載は具体事例が非常に少なく、青本の記載のみから保護対象を正確に理解するのは難しいです。

審査基準は特許庁が作成するもので青本の趣旨を踏まえた具体例が豊富に記載されているので、審査基準を読むと意匠法の保護対象である美的外観にかかるアイデアや商標法の保護対象である標章に化体した信用とは何かを効率的に理解できます。

◆他人の優秀答案

論文試験で初めから何を書いたら良いかを理解している受験生はいません。

受験機関の公開する過去問の模範解答も受験機関の威信をかけて受験のプロである複数の講師の協議によって作成されたものであるため、本番の時間内で同等レベルの内容を記述することは難しいです。

他人の優秀答案は受験機関の模範解答までの精度はありませんが、受験生が本番の制限時間内に到達できる合格レベルの記載内容を知るのに役立ちます。

また、優秀答案と自分の答案を比較することで自分の答案に足りないものを知れますので、優秀答案を手に入れて研究してみて下さい。

以上が弁理士試験二次試験突破に必要な書籍とその活用方法です。

二次試験は早く適切な勉強法を知り実践すれば合格できます。

正しい勉強法を実践して合格を勝ち取りましょう!


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